「みんなできてるのに…」デジタル疎外感から抜け出した私の小さな一歩
デジタルの中に感じる「自分だけ取り残されている」感覚
スマートフォンが普及し、インターネットやSNSを通じて、遠く離れた家族や友人とも瞬時に繋がれる便利な時代になりました。多くの人が楽しそうに画面の中で交流しているのを目にする機会も増えたように感じます。
一方で、そうしたデジタルの波に乗り切れていないと感じ、どこか置いていかれているような、あるいは「自分だけがうまくできていないのではないか」といった疎外感や孤独感を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。私もかつて、まさにそう感じている一人でした。
スマホを見るたびに募る焦燥感
現役を引退してから、時間にゆとりができたことで、これまであまり深く関わってこなかったデジタル機器と向き合う機会が増えました。特にスマートフォンは、家族との連絡手段として欠かせないものとなりましたが、同時に私に新たな悩みをもたらしました。
家族や古い友人たちが、LINEでグループを作って頻繁にやり取りをしたり、孫が送ってくれた写真が共有フォルダに入っていたりするのを見るたび、「自分は簡単な返信しかできない」「写真の保存方法もよく分からない」といった自分のデジタルスキルの足りなさを痛感しました。
特に辛かったのは、皆が当たり前のようにSNSで近況を報告し合い、そこにコメントを付けたり「いいね」を送り合ったりしている様子を見たときです。「みんな、こんなに簡単に色々な人と繋がって、楽しそうにしている。それに比べて自分は、ただ見ているだけ。輪の中に入れない。」そう考えると、言いようのない寂しさと、自分が社会から切り離されているかのような孤独感が募りました。
簡単な操作につまずく自分自身に嫌気がさすこともありましたし、「今さら人に聞くのも恥ずかしい」という気持ちもありました。その結果、スマートフォンを開くこと自体が億劫になり、家族からの連絡以外は必要最低限のことしかしないようになりました。デジタル機器は、私にとって「便利なもの」であると同時に、「自分ができないことを突きつけられる嫌なもの」になっていたのです。
「みんな」に合わせる必要はないと気づいた小さなきっかけ
そんな状態がしばらく続いたある日、かつての職場の友人から電話がかかってきました。彼女も私と同じくらいの年齢で、デジタル機器はあまり得意ではないと話していました。
「最近、みんながSNSで楽しそうにしてるのを見ると、ちょっと寂しくなっちゃうことがあるのよ」と、彼女がポツリと漏らしたのです。その言葉を聞いたとき、私はハッとしました。ああ、自分だけがそう感じているわけではないのだ、と。
その友人は続けました。「でもね、無理してSNSで毎日投稿したり、たくさんの人と繋がったりしなくても、大切な人とは電話でも会って話しても、ちゃんと心は通じるものね。自分ができる方法で繋がっていれば、それで十分かなと思って。」
この言葉が、私の心をとても軽くしてくれました。「みんなができていること」に無理に合わせようとしていた自分に気づいたのです。私は、SNSで広く浅く繋がるよりも、電話や直接会うことで、じっくりと話す方が好きでした。それなのに、デジタルの世界で「みんなと同じようにできない」というだけで、自分を否定的に見ていたのかもしれません。
自分に合ったペースで、大切な繋がり方を大切にする
友人の言葉をきっかけに、私はデジタルとの付き合い方を見直すことにしました。
まず、スマートフォンを「みんなと同じように使いこなさなければならないもの」ではなく、「私が便利だと感じることだけに使えば良いもの」と捉え直しました。例えば、家族との連絡はLINEのメッセージ機能だけで十分、写真の共有は操作が簡単な部分だけ使う、といった具合です。分からないことは、信頼できる家族や友人に遠慮なく聞く勇気も持ちました。一度に全部を覚えようとせず、一つずつ、ゆっくりとです。
そして、デジタルで繋がることだけが人間関係ではない、という当たり前のことを改めて意識しました。週に一度は友人と近所のカフェでお茶をする、趣味の集まりに積極的に参加する、といった、顔を見て話せる機会を大切にしました。
そうするうちに、不思議とデジタルに対する焦りや苦手意識が和らいでいきました。完璧でなくても良いと思えるようになり、できない自分を責めることも少なくなりました。デジタルは便利な道具として、できる範囲で活用し、心の繋がりは、自分にとって心地よい方法で育んでいけば良いのだ、と心から思えるようになったのです。
焦らず、自分らしく
デジタル化が進む社会の中で、疎外感や孤独を感じることは、決して特別なことではありません。多くの人が、程度の差こそあれ、同じような気持ちを抱えているのではないでしょうか。
大切なのは、「みんなと同じようにできない」と自分を追い詰めないことです。デジタルはあくまで生活を豊かにするための道具であり、それに振り回されて心を乱される必要はありません。
もしあなたが今、デジタルの中に孤独や疎外感を感じているとしたら、まずは深呼吸をして、少しデジタルから距離を置いてみるのも良いかもしれません。そして、自分が本当に大切にしたい繋がりは何か、自分にとって心地よいコミュニケーションの方法は何かを考えてみてください。
小さな一歩でも、自分に正直な選択を積み重ねることで、デジタル疲れから解放され、心穏やかな日々を取り戻すことができると信じています。あなたのペースで、大切な人との繋がりを大切にしながら、デジタルとも上手に付き合っていけますように。